結婚ビザ(「日本人の配偶者等」の在留資格)は他の在留資格と比べて優遇(条件緩和)されている点が多いです。前回の「結婚ビザの審査は厳しい?」のところで述べた「就労制限なし」というのが最も大きな優遇だと思いますが、他にも優遇されている点があります。
①永住許可(永住者の在留資格)の要件緩和
永住者とは入管法の別表第二で「法務大臣が永住を認める者」と定められており、すなわち「今後審査を受けることなく一生涯日本に在留する事ができる資格」であると言えます。
永住者になるとクレジットカードはもとより、住宅ローンを組む事もできるので、ほとんど日本人と同じように生活できるという意味で、目指す人が多いというのも納得できます。
さて、永住許可の要件は入管法第22条に定められていますが、まとめると次の3つです。
1、素行が善良である(例:重大な交通違反などがない)
2、独立生計を営む資産か技能がある(財産か収入がある)
3、日本国の利益に合する(下記アからエ)
日本国の利益として「永住許可に関するガイドライン」で次の4つが決められています。
ア、引き続き10年以上日本に在住、うち5年以上就労又は居住ビザで在住
イ、罰金刑、懲役刑の経験なく、納税義務を果たしている。
ウ、現有の在留資格の期間が3年以上。
エ、公衆衛生の観点から有害でないこと。
しかし「日本人の配偶者等」の在留資格から永住許可を申請する場合の条件はぐっと緩和されていて、次の4つだけです。
ア、婚姻生活3年以上かつ引き続き1年以上日本に在留している。
イ、罰金刑、懲役刑の経験なく、納税義務を果たしている。
ウ、現有の在留資格の期間が3年以上。
エ、公衆衛生の観点から有害でないこと。
なんと1(素行)と2(経済力)の要件なし! しかも日本での在留期間はたった1年だけでいいのです! 就労ビザの人が10年もかかるところをたった1年で永住許可の申請ができるなんてすごい優遇ですよね。
②帰化の要件緩和
帰化というのは日本国籍をとる、つまり「日本人」になるという事です。
ちなみに入管法2条に用語の定義がありますが、「外国人」の定義は「日本の国籍を有しない者」です。つまり日本国籍を取ると、たとえ二重国籍者であっても「日本人」なのです。
日本人になると世界の多くの国で査証免除されているため、海外旅行や海外出張などの時は査証申請の手間が省けて便利ですが、通常二重国籍は許されず、帰化することで元の国籍を捨てる事になるため迷う方が多いようです。
帰化の要件は国籍法第5条に定められており、通常は次の6つです。
1、引き続き5年以上日本に在住
2、20歳以上で行為能力者
3、素行が善良である
4、生計を営むことができる(配偶者等同一生計者含む)
5、元の国籍を失う事ができる
6、政府の破壊を企てたり主張しない
※国籍法にはありませんが実際は日本語能力も問われるようです。
しかし「日本人の配偶者等」の在留資格から帰化を申請する場合、次のいずれかの要件を満たせば、上記の1と2を無視できます。
ア、引き続き3年以上日本に在住
イ、婚姻後3年以上経過、かつ引き続き1年以上日本に在住
つまり通常は引き続き5年以上日本に住んでいないと帰化できないところ、結婚生活3年以上なら引き続き1年日本に住むだけで帰化できてしまいます。(3から6の要件を満たす場合)
「日本人の配偶者等」の在留資格はお得がいっぱいのようですね。日本人側から見ても自分の結婚相手が在留資格の更新など面倒な手続きがいつも付きまとうというのは煩わしいものですから、早くすっきりと永住許可をもらえると助かりますよね。
当事務所では永住許可、帰化の申請も随時ご相談を承っております。
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